水中ロボット

福島県には,磐梯朝日国立公園に指定されている猪苗代湖をはじめ多くの湖沼が存在し,そこでは様々な環境調査がおこなわれています。また,最近では2011年3月に発生した福島第一原子力発電所の事故により放出された放射性物質の観測もおこなわれています。しかし,複雑な地形や使用可能な船舶の大きさ等から,これらの調査に多機能で大型の機材を用いることは困難です。そのため,多くの場合は人間が小型の計測装置を携行して各地点を回り,多大な時間と労力をかけて調査をおこなっているのが現状です。特に放射性物質については,定期的かつ継続的な調査が重要であることから,計測にかかる手間は増加してしまいます。


dsc00881s近年では,多くの研究者により,さまざまな環境調査のための水中ロボットが積極的に開発されています。これらの水中ロボットは機能や大きさは様々ですが,より多くの機能を搭載するほど大型化する傾向にあります。それに伴い,高い運用技術とコストが必要となり,専用の支援母船を必要とするなど,少人数での運用が困難になってしまいます。一方,搭載する機能を絞ることでロボットは小型化が可能になり,より多くのユーザーが容易に取得,運用することができるという利点が生まれます。しかし,搭載機器が限定されてしまうため1台ではユーザーの求める作業内容のごく一部にしか対応することができなくなってしまいます。

 

これは,予め必要な機能を全てロボットに搭載しようとすることから生じるもので,調査の現場で容易に機能の取捨選択ができれば,小型のロボットで必要な機能を機動的に搭載することができます。しかし,猪苗代湖でも最深々度が約100mあり,10気圧もの高圧がかかるため,ロボットの気密性を保持しつつ,ロボットの非専門家がその場で搭載機能の交換をすることは容易ではありません。

 

この課題を解決する手段として考えられるのは,ロボットを小さな機能モジュールの集合として構成し,それぞれをワイヤレスで接続することです。これにより,現場で気密性を損なう可能性があるような分解作業を排除できます。ワイヤレス接続を行うためには,水の汚濁などの影響を受け難い電波が適していると考えられますが,一般に,水中では電波は著しく減衰してしまうため,通信は困難といわれてきました。しかし調査してみると,淡水中で10数cm程度であれば,小型の通信モジュールを利用して十分に高速通信が可能であることがわかりました。

 

本研究では,主に湖沼の環境調査を目的としたモジュール構造型小型水中ロボットの開発を目指しています。また,開発する水中ロボットが,生物の観察などを含めた環境調査を目的としていることから,ロボットから発せられる雑音を低減することも非常に重要であると考えられます。これらの視点を入れた研究開発を行っています。

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Title Author
カメラ内蔵型メインモジュール Written by 猿田祐平
低雑音型ワイヤレススラスタモジュール Written by 大室拓哉
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