人間計測・福祉ロボット

ロボット技術は,近年大きく進化してきています。特に,コンピュータの高速化による情報処理能力の飛躍的な向上は,自然言語処理や大量のデータベース処理なども,ロボットに搭載可能な規模のコンピュータでかなりのレベルでの実行を可能としました。一方で,まだ発展途上の技術も多く,鉄腕アトムのようなロボットを実現することは,現在の技術レベルでは極めて困難です。例えば,人は自分の脚を使ってかなりの高さまで跳躍することができます。しかし,ロボットでそれを実現するためには,バネ等のエネルギを蓄積できる機械要素を併用するなどしない限り,電気モータ等のアクチュエータだけでそのような高さまで跳躍することは不可能です。つまり,人間の筋肉は極めて優秀な動力発生デバイスであるということを意味しています。このことは,言い換えると,人間をシステムの一部として組み込むことで,通常では実現できないようなロボットを実現できる可能性があることを意味します。たとえば,筋肉は外部から電気刺激を与えることで,ある程度コントロールすることができます。これは機能的電気刺激(Functional Electrical Stimulation; FES)とよばれる技術であり,これを利用して麻痺した脚で自転車を漕いだり,あるいは脳梗塞などで動かなくなった手を動かしたりすることができるようになります。

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 また,ロボット研究が,人間や動物そのものの研究につながる場合もあります。たとえば,短距離陸上選手が最も速く走るためにはどのようにすればよいか検討を進めていくと,外部からのエネルギー補給を行わずに歩行(走行)を続けることのできる受動歩行ロボットの研究につながっていきます。つまり最もエネルギー(労力)を使わずに走ることが最速の走法である可能性があるということです。

 

さらに,ロボット技術を使うことで義手や義足の機能を大きく向上させることができます。ここで重要となるのは,装着者の意思を的確に理解して動作することのできる能力です。このような機能を実現するためには,筋電図(Electromyography; EMG)を使って残存している筋を動かして行うことが一般的ですが,筋電図では発生力の大きさを正確に計測できないなどの課題があります。そこで,筋電図の代わりに,筋の力発生に伴って生じる筋の硬度変化を利用したインタフェースの開発を進めています。

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